組織案内

ご案内

「現場の医療を守る会」代表世話人
坂根 みち子(坂根Mクリニック院長)

現在「ヒヤリ・ハット」事例を積極的に報告させ、医療事故の防止に努めている医療機関は多いと思います。その場合、当事者名は省かれ、事例のみの検討となり、当事者が責められることはありません。WHO(世界保健機関)の『医療安全のためのガイドライン』にもあるように、再発防止を目的とした情報収集のためには、当事者が話したことで罰せられないこと(責任追及してはいけない)、その内容が漏れないこと(公開してはいけない)が原則だからです。人は誰でもミスを犯し得るものですから、故意ではない医療事故で関係者を処罰しても何もいいことはない、それより失敗に学び、次につなげたほうがメリットは大きいわけです。

この原則から大きく逸脱した“医療事故調”案が今の通常国会で法制化されます。

今後、全ての医療機関を対象に、院内で「予期せぬ死亡」があった場合、まず第三者機関に届出、速やかに院内調査機関を立ち上げて院内調査を行い、第三者機関に報告することが義務付けられます。そして、本来公開されてはいけないはずの調査報告書は遺族に渡されることが明記されました。また遺族が納得しない場合には、第三者機関が改めて調査します。それでも納得しない場合、責任追及のために使われてはいけないはずの調査報告書を遺族が裁判の資料として使うことを禁じてはいません。

この制度は、WHOガイドラインに明らかに違反しています。自らの首に縄をかけることになる可能性がある状況で、現場の医療者は正直に報告できるのでしょうか。これでは本来の目的である再発防止と医療安全の推進は達成できません。
この法案に対して、調査報告書をそのまま遺族にも渡すことは問題だと、どの医療団体も考えています。それなのになぜこんなことになってしまったのでしょうか。分かりやすくいうと、ここまで来るのに時間がかかりすぎて、そろそろ決めないと医療界のエゴだと思われてしまう「空気」があったこと、そして一番の原因は“医療事故調”に対する現場の興味が薄れ、大野病院事件の時のような大きな反対の声が現場から上がらなかったからに他なりません。

実際、“医療事故調”のどこが問題かきちんと把握していない人がほとんどだと思います。でも、この制度の一番の当事者は現場の皆さんなのです。管理者側と現場の医療者の間には利益相反があります。東京女子医大事件、福島の大野病院事件などを見ても分かるように、現場の医療者はいわれなき責任を今までに何度も押し付けられてきました。

今回の“医療事故調”制度もその危険性を十分はらんでいます。

全例報告義務のある「予期せぬ死亡」の定義さえ定まっていません。もちろん「予期せぬ死」があれば、遺族に迅速に真摯に説明するのは当然です。今回の法制化は、それに加えて第三者機関への届け出、院内調査委員会の立ち上げ、調査報告書の作成と、膨大な業務が現場に降りかかってきます。

また「ヒヤリ・ハット」事例でご存知のように、再発防止のためにさまざまな可能性を考え、調査報告書には「こうすべきだった」という事項がたくさん並びます。「再発防止」のために、いわば後出しじゃんけんで検証しており、一般の方が納得しやすい書き方にはなっておりません。この調査報告書をそのまま遺族に渡すとどうなるのでしょうか。かえって医療不信と訴訟を誘発させないでしょうか。その際、調査報告書は相手方の弁護士にとっては願ってもいない証拠となります。

各医療団体は問題点を認識しつつも、立場上落としどころを探して合意しました。今後、厚労省の研究班でガイドラインの細部が決まり、2015年秋には“医療事故調”が実際に動き出します。そして半年間の試用期間を経て最終的なものが確定します。

“医療事故調”の行く末を見守ってきた人たちは、現状に大変危機感を持っています。このままの制度が固定化されれば、ある日突然、大野病院事件と同じような衝撃が現場に走ることは想像に難くありません。大野病院事件以降、産科を扱う医療機関は大きく減少し、医療崩壊の一因となりました。今の日本の医療界には現場の声を反映する場所がなく、さらに医師はあまりに多忙で“医療事故調”の議論を見守る暇がありません。また医師は一枚岩にまとまりにくく、議論百出してしまいます。

それなら、「期間限定・“医療事故調”シングルイシュー」でまとまれないでしょうか。そのツールとして、一番手軽でお金も時間もかからず、だれでも参加できるメーリングリストはいかがでしょう。できることは何でもやってみよう。今回どの医療団体も代表しない一臨床医である私のアイデアに、この制度の問題点を心配する多くの関係者が共感し、発起人として名を連ねてくれることになりました。その中には医療関係者だけでなく、弁護士から政治家まで各分野の専門家がたくさん入っています。この制度により医療崩壊が進めば、大きな不利益を被るのは国民全体だからです。

今後個人の医師、歯科医師、医療機関の関係者、法律家、医学生、看護師、臨床工学技士、検査技師などのコメディカルの方も含めた関係者の方々にメーリングリスト(ML)登録をお願いします。そして知り合いにも勧めてください。それぞれの医療機関も、これからどのような報告書を書いてどう対応していけばいいのか検討が必要です。立場にこだわらずにMLに参加し、情報を共有し発信していけば、現場から制度を変える大きな力となると思います。

2014年4月1日


メンバー

役職 名前 その他
代表世話人 坂根 みち子 坂根Mクリニック院長
世話人 井上 清成 井上法律事務所 弁護士
世話人 於曽能 正博 おその整形外科院長
世話人 小田原 良治 日本医療法人協会常務理事
世話人 上 昌広 東京大学医科学研究所特任教授
世話人 佐藤 一樹 いつき会ハートクリニック院長(東京女子医大事件当事者)
世話人 中島 恒夫 全国医師連盟代表理事
世話人 満岡 渉 諫早医師会副会長
世話人 岡崎 幸治 日本海総合病院・研修医
発起人 足立 信也 民主党参議院議員・医師
発起人 赤羽根 巌 赤羽根医院院長
発起人 秋山 正史 倉敷藤戸クリニック
発起人 有賀 徹 昭和大学病院 病院長
発起人 池下 久弥 池下レディースチャイルドクリニック院長
発起人 石井 みどり 自民党参議院議員 歯科医師
発起人 市川 直明 長野赤十字病院 血液内科副部長
発起人 伊藤 英一 新潟県立新発田病院内科部長
発起人 井上 博文 井上博文クリニック 院長・行政書士井上博文事務所 所長
発起人 植山 直人 全国医師ユニオン代表
発起人 梅村 聡 前参議院議員・医師
発起人 江原 一雅 滋慶医療科学大学院大学教授
発起人 大磯 義一郎 浜松医科大学医療法学教授
発起人 大澤 一記 日本橋人形町法律事務所 (弁護士・医師)
発起人 太田 信次 中村病院 外科部長
発起人 小形 歩 東京保険医協会事務局長
発起人 岡田 弥生 草の根歯科研究会(歯科医師)
発起人 加藤 克彦 国立病院機構福島病院産婦人科・大野病院事件当事者
発起人 金澤 信彦 とよす内科クリニック院長
発起人 木ノ元 直樹 木ノ元総合法律事務所(弁護士)
発起人 後藤 貞人 後藤貞人法律事務所(弁護士)
発起人 小林 康子 全国社会福祉協議会・中央福祉学院教授
発起人 小松 秀樹 亀田総合病院副院長 
発起人 酒井 均 一之江けいゆう整形外科クリニック院長
発起人 佐藤 耕一郎 岩手県立病院医師連合会会長
発起人 柴山 慶太 SOLA法律事務所(弁護士)
発起人 申 偉秀 関町内科クリニック院長
発起人 杉原 正子 慶應義塾大学医学部精神神経科学教室助教
発起人 鈴木 義彦 自治医科大学医療安全対策部
発起人 須田 昭夫 須田クリニック院長
発起人 須原 貴志 下呂市金山病院 院長
発起人 相馬 孝博 日本心臓血圧研究振興会附属 榊原記念病院 副院長
発起人 染川 周郎 染川法律事務所
発起人 高田 佳輝 特別養護老人ホーム 南さいわい
発起人 高本 孝一 日本乗員組合連絡会議事故対策委員・JL706便事故当該機長
発起人 竹崎 三立 天沼診療所院長
発起人 田邉 昇 中村・平井・田邉法律事務所 弁護師・医師
発起人 田上 尚志 田上法律事務所
発起人 堤 晴彦 埼玉医科大学総合医療センター 病院長
発起人 中澤 堅次 NPO法人医療制度研究会理事長
発起人 中島 恒夫 全国医師連盟代表理事
発起人 新田 清明 一宮温泉病院神経内科
発起人 拝殿 清名 東京保険医協会会長
発起人 橋本 岳 衆議院議員
発起人 長谷川 剛 自治医科大学附属病院医療安全対策部長
発起人 林 恭弘 祐ホームクリニック院長
発起人 日野 頌三 日野病院理事長
発起人 藤田 卓仙 慶應義塾大学医学部総合医科学研究センター特任助手
発起人 細田 悟 大田病院リハビリテーション科医長
発起人 本田 孝也 長崎県保険医協会会長
発起人 本田 宏 埼玉県済生会栗橋病院院長補佐
発起人 松原 要一 新潟労災病院院長
発起人 水沼 直樹 医療法人鉄蕉会 亀田メディカルセンター・弁護士
発起人 望月 泉 岩手県立中央病院院長
発起人 山内 孝義 日立製作所ひたちなか総合病院 副院長・循環器内科
発起人 吉田 章 よしだ内科クリニック院長 (東京都)
発起人 米田 泰邦 米田泰邦法律事務所(弁護士)・元裁判官
発起人 和田 拓郎 和田総合法律事務所
発起人 和田 仁孝 早稲田大学大学院法務研究科教授